作品のタイトル:「人と風景と、出会う」

不登校を経験すると、世の中が自分を応援してくれている、支えてくれるという感覚とは真逆の経験をします。私はずっと「不登校の私は社会の中のどこにも位置づかない」と感じてきて、それがあまりに自然だったので気づきもしませんでした。それゆえにいつも様々なものと距離があって、表現を表に出してみるということは恐いしピンとこない。誰かに見てもらいたいけど、見てもらう相手って「世間の人」で、私とは違う世界に住んでいる人、だとしたら見てもらってどうしたいんだろう…?と、いうような感覚を、きれいに言語化しないかたちで潜在的に持ち続けていました。
今回の制作は、そのように遠かった「世間」やそこに生きている「人」と関係を築くために取り組みます。のぞき見しながらも生まれる愛情を描き留めたい。本当は私も「世間」をつくる一員であるのですが、やっぱり線を引いて「世間」と感じてしまう私も、今現在いる。清濁まぜこぜに、率直に向き合いたい。私なりの、「世間」との和解になっていけばいいと思います。
そんな私のような人からすると、このように応援してくれる仕組みがあるということはそれこそ和解の後押しになるのだと思います。この基金を使って製作に取り組むにあたって、考え、発見したことがいくつもありました(自信なくなってきちゃった、でもやるって言っちゃったからやらなきゃ、そもそもどういう絵を描きたいんだっけ?ギャー!とか言いながら)。このような機会がないと難しかったことです。
これからもどうぞ表現者応援基金という成長(という言葉をあえて使おう)の場をこの世の中に置いていてください。運営はいろいろなご苦労があると思いますが、なにとぞ、お願い申し上げます。